現地レポート

マゾーニ・ベッチゥ 2024年10月

地中海に浮かぶ自然豊かな島、サルデーニャを代表する有機栽培オリーブオイルの生産者「マゾーニ・ベッチゥ」を訪ねました。

ローマから飛行機で約1時間、10月のカリアリにはまだ暑い空気が残っていました。空港ではオーナーのニコラ・ソリナス氏が笑顔で出迎えてくれました。早速、農園のある町ヴィッラチードロを目指しました。カリアリから北西に約50キロ、車で約1時間、何ヶ所かに分散するマゾーニ・ベッチゥのオリーブ畑のひとつに到着しました。ウリーヴィ・セコラーリと呼ばれる樹齢100年以上のオリーブの一群が目を惹きます。

中には樹齢300年を越えるものもあり、そのスケールの大きさに圧倒されます。今まさに収穫時期を迎え、どのオリーブもオリーブ果実がたわわに実り、その重さで枝がしなっているかのようです。農園のシンボルとして、剪定など人の手は加えず自然のままの姿にしているとのことです。

現地レポートマゾーニ

この畑ではサルデーニャ島の地品種ボサーナと、ここヴィッラチードロの固有種ネーラ・ディ・ヴィッラチードロが栽培されています。オリーブ畑には一面に青々としたクローバーが植えられており、まるで緑のカーペットが敷き詰められているかのようでとても綺麗です。クローバーなどマメ科の植物は窒素が豊富で、土壌を活性化させる力があるそうです。またこのクローバーがあるおかげで、収穫時オリーブを地面に落とす際、オリーブに傷がつかないという利点もあるようです。

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次は、地元の協同組合から借りている作業場へ向かいました。そこでは数人のスタッフがオリーブの塩水漬けを仕込んでおり、ニコラ氏の奥様ヴァレンティーナさんが陣頭指揮をとっていました。塩水漬けの工程は、まず実を選別機にかけ、大きさによって3段階に別けます。葉、枝を取り除き、水洗いした後は、大きなプラスチックの容器にオリーブを入れます。そこに、地元サルデーニャ島の海塩で作った塩水(塩分濃度7~8%)を加えて渋抜き、発酵という流れです。収穫期はオリーブオイルの搾油だけはなく、こうしたオリーブの加工もあり、目の回るような忙しい毎日のようです。

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その後、事務所兼ご自宅へ移動しました。1階の事務所には、壁一面に数々の受賞の賞状や盾、トロフィーなどがところせましと飾られています。早速ここで、今年の搾りたてオリーブオイル「ノヴェッロ」のテイスティングです。フレッシュな香味はまさにオリーブのジュースです。その後、サルデーニャ島名物、薄焼き乾燥パン、パーネ・カラサウに振りかけ試食を続けます。

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夜、近くのレストランでのディナーにはノヴェッロ持参で向かいました。食事のスタートもまずはパーネ・カラサウが登場しました。軽く炙ったに温かなパーネ・カラサウでノヴェッロの香りが立ち上がります。パスタはサルデーニャ名物のツナとボラのカラスミのトマトソースでした。ニコラ氏がたっぷりとのノヴェッロを振りかけてくれます。そして、メインの魚介のグリルにも。マゾーニ・ベッチゥのオリーブオイルは、魚介料理には最高の相性です。

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翌朝、フラントイオ(搾油所)があるオリーブ畑へ向かいました。畑の一角には木製の支柱に気象観測器が設置されていました。農協の観測器で、気温、湿度、風速、日射量、降水量等、多くのデータをモニターし、それがリアルタイムで携帯のアプリに送られてくるとのことです。このデータに基づき、灌漑、肥料、病害虫対策などを適切な農作業を行うそうです。個人のオリーブ農家にとっては心強い味方です。また有機栽培オリーブ畑ではよく見られる黄色の害虫捕獲器も至るところに設置されていました。農学博士でもあるニコラ氏とヴァレンティ―ナさんは、様々なことに研究熱心です。

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ここでも、オリーブの収穫の真っ最中です。樹齢35年ほどの若い木が中心ですが、中には約300年のオリーブもあります。ネーラ・ディ・ヴィッラチ―ドロには、健康でとても綺麗なオリーブが実っていました。生憎の曇り空でしたが、電動ハタキで収穫するチーム、電動アーム機械で幹を揺らしてオリーブをネットに落とすチーム、二手にと分かれて作業しており、ニコラ氏がそれぞれにサルデーニャ言葉で指示を飛ばしています。

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フラントイオに戻ると、すでにヴァレンティ―ナさん、ヴァレンティ―ナさんのご両親、息子のジャンマリオ君が揃い、皆でランチの準備をしています。ニコラ氏はいつの間にかオリーブ畑の一角にある窯の方に移動しています。朝から窯に火を起こし、今日のメイン、サルデーニャ自慢の定番料理、ポルチェッドゥ(子豚の丸焼き)を用意してくれていたようです。

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パスタは、サルデーニャのご当地パスタ、マッロレッドゥス(所謂ニョケッティ・サルディ)です。ソースはもまたこの地のご当地ソース、カンピダーノ風(サルシッチャ入りのトマトソース)です。他にもピンツィモーニオ(生野菜スティックをオリーブオイルと塩でいただく)や、トマトのブルスケッタなど盛り沢山です。どれもトマトの香りがするイスピリトゥ・サルドゥにはピッタリのお料理です。

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ヴァレンティ―ナさんのお父さん、ジャンニ・デイッダさんによると、このオリーブ畑はデイッダ家が数世紀前から所有しているそうです。ジャンニさんご夫婦がここにフラントイオを作り、娘のヴァレンティーナさんご夫婦が後を継いでくれたとのことでした。孫のジャンマリオ君もオリーブ畑が大好きということでとても満足そうに語っていたのが印象に残ります。

食後に、オリーブの搾油が始まる前のフラントイオを見せていただきました。フラントイアーノ(搾油のプロフェッショナル)であるニコラさんから説明を聞きます。オリーブの実の粉砕はナイフ型、水を加えない段階方式の遠心分離機でオイルを抽出し、即座にフィルターにかけるなど、搾油方法や保管方法、すべてにおいて手を抜かず、クオリティを追求している姿勢がひしひしと感じられます。

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こうして2日間の訪問はあっという間に終わってしまいました。皆様にお世話になったお礼とご挨拶をして、カリアリへと戻ります。帰路、車窓から見えるのは一面に広がるアーティチョーク畑、そして時折見かける羊たちの姿。社名の「MASONI BECCIU」は、サルデーニャ言葉で「古い家」「羊小屋」を意味するそうです。羊の島、サルデーニャらしい名前です。

オルシーニ  2024年10月

2024年10月、イタリア中部、ラツィオ州のオリーブオイル生産者「アズィエンダ・アグリーコラ・ビオロジカ・オルシーニ」を訪問しました。10月のイタリアと言えばオリーブの収穫と搾油の真っ最中。搾りたてのオルシーニのオリーブブオイルはどういう感じなのだろうか?興味津々でローマのテルミニ駅から電車に乗りました。

ナポリ行きの普通列車で、最寄りのプリヴェルノ-フォッサノーヴァ駅を目指します。車窓からは緑豊かな小山、ときおり白い岩肌が覗いています。ガタッゴトッとのんびりと進む列車は、およそ1時間で目的の駅に到着。駅にはシニョール(紳士)が迎えにきてくれており、車で数分のオルシーニ社に向かいます。

現地レポートオルシーニ

事務所兼フラントイオ(搾油所)に到着すると、すでに搾油機械は稼働中。オーナーのパオラさんとパオロさんご夫婦、娘さんの3人が中心になって忙しそうに動き回っていました。「Piacere!(はじめまして)」笑顔で迎えてくれましたが、とにかく一年で一番忙しい時期なので、やることが次から次にやってくるご様子。近隣の農家も次々とオリーブを持ち込んできます。大切な搾油の邪魔にならないようまずはオリーブ畑の見学に向かいました。

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最初に向かったのは丘の斜面にあるオリーブ畑です。5分くらい進むと、オルシーニ家の住まいだという立派なヴィッラ(お屋敷)が建っていました。ちょうど外壁の修繕中でしたが、オルシーニのオリーブオイルの表ラべルに描かれている可愛いお城のような絵柄はこのヴィッラをモチーフにしているそうです。

この辺りは海岸からは30kmくらい内陸です。小高い山の中腹にある標高200mの畑には見晴らしのいい景色が広がります。栽培するオリーブは約10,000本。畑は大きく2つのエリアに分かれていて、一つは砂地のエリア、もう一つは岩石の多いエリアです。砂地のエリアには樹齢300年くらいのオリーブの古木もありました。未だ品種が判明していないオリーブもあるそうで、大学の研究所で研究対象になっているそうです。

現地レポートオルシーニ

岩石の多いエリアではオリーブの収穫中でした。電動のハタキでやさしくイトラーナ種(このエリアの地品種)を枝から払っています。このハタキでの収穫を体験させていただきましたが、1分も持っていられないくらいとても重く、かなりの重労働だということを実感しました。オリーブ畑にはあちこちにメントゥッチャと呼ばれる小さいミントやチコリが自然に生えていて、歩くとミントのいい香りが漂ってきます。

現地レポートオルシーニ

畑からの帰り道では「オルシーニ コンディメント・アル・リモーネ」に使われている有機栽培のレモン畑に立ち寄りました。レモンだけでなくオレンジなどの健康な実のなる柑橘畑です。オルシーニ社のレモンフレーバーのオイルは、このレモンが40%、オリーブが60%で作られています。レモンに触れてみると、その皮の香りがとても素晴らしく、レストランのシェフにも人気なのが納得です。

現地レポートオルシーニ

搾油所に戻り、今年収穫したばかりのオイルのティスティングが始まります。搾りたてのノヴェッロ(クリーム色ラベル)、DOPコッリーネ・ポンティネ(赤ラベル)、限定品のリゼルヴァ(白ラベル)が用意されています。香りの素晴らしいノヴェッロはトマトや青りんご、アーティチョークの香り。DOPは香味のバランスが素晴らしく、今期のオイルの期待が高まります。2024年から全てのオイルはフィルターをかけているオルシーニ社。最近は良い状態を保つため長期保存にむくフィルターをかけているとのことです。

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13時ごろになると、作業中のスタッフも交代でランチをとります。この地域はモッツァレラ・ディ・ブーファラ(水牛のモッツァレラチーズ)が特産です。この白いフレッシュチーズにも搾りたてのオイルをたっぷりと振りかけていただきした。そしてもちろんパンにつけていただきます。一緒にランチを囲んだパオロさんに、このタイミングでいろいろ質問してみました。

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自社農園のオリーブは、搾油機を綺麗に洗浄し、毎日夕方から搾油が始めるそうです。オリーブの収穫は朝から、その日一日に搾油できる分だけを収穫することに決めているとのことです。「毎日焼くパンのようにね!」搾油担当のパオロさんは、ちょっぴり疲れた顔で話していました。この連続が10月から12月まで毎日続くそうです。

「有機栽培にとっては気候がとても重要なんだ。8月は毎年オリーブ・ミバエとの戦争なんだ。今年は夏は暑かったからミバエがまったく発生しなかったので、オリーブがとてもいい状態だよ。見ての通り実がとっても綺麗だよ。有機栽培にとっては、害虫が発生しないのはとてもありがたいよね。」「オリーブオイルを搾った後の搾りかすは発酵させて堆肥にし畑に戻すんだよ。だからオリーブの木もみんな元気だ。」

現地レポートオルシーニ

フラントイアーノ(搾油人)であるパオロさんに、搾油機について聞いてみました。「搾油開始からオイルになるまでは、だいたい4時間から4時間半。2段階方式と、2段階方式半と使い分けます。今年は2段階方式のみ。オリーブはコルテッリ(ナイフ型)で粉砕してるよ。」と専門的な話をどんどんしてくれます。オリーブ畑は50ヘクタールで、毎年平均で20,000リットル(500mlボトルで40,000本)の生産量とのことです。

オルシーニ家のおすすめの食べ方も聞いてみました。「やっぱりグリルしたお肉!それからスープ、いろいろな野菜、豆類、魚は特にマグロがいいね」。パオロさんはお喋りしながらあっという間にランチを食べて、絶え間なく動いている搾油所の方に移動していきます。

駅に着いた時から案内してくれているシニョール(オルシーニ家と家族付き合いの元大学教授)もいろいろ説明してくれました。「ムッソリーニの時代、この辺りの土地の開墾をするために水牛が用いられていたんだ。水牛がたくさんいるから当然ミルクもとれたわけで、そこで生まれたのがこのあたりの名産、モッツァレラ・ディ・ブーファラなんだよ。ここのオリーブオイルにピッタリによく合うんだよね。」数年前までは水牛(ミクルのでない牡)のカルパッチョで食べていたようです。

現地レポートオルシーニ

そしていよいよ稼働中の搾油所の見学です。とにかく大音量のため、搾油所に入る時はみな耳栓をします。「ほら、ちょうど搾りたてのオイルが出てくるよ!」促されてチューブの先を見ていると、緑色の雫から、あっという間に液体が出てきました。とても綺麗な、蛍光緑の白濁した翡翠色のオリーブジュースです。実からオイルになったところを見ると感動します。

倉庫で、弊社がオーダーしたノヴェッロ・オリーブオイルを箱詰め中でした。パオラさんは、注文を受けたり来客の接客をしたり、事務所と搾油所を行ったり来たり。フラントイオの外に出ると、自社畑で収穫したばかりイトラーナ種のオリーブが、夕方から始める搾油に合わせて運びこまれてくるところでした。忙しい一日はあっという間に進みます。

現地レポートオルシーニ

一通りの見学を終え、オルシーニ家の皆様に見学の感謝とご挨拶をしました。オリーブの実を粉砕して搾っただけの、まさにオリーブのジュースというのにふさわしいオルシーニのオリーブオイル。搾油方法、技術は変わったにせよ、何千年も前からこうやって当たり前のようにイタリア人の生活とともにあるオリーブオイル。ローマ時代などはどうだったのだろうと想像しながら、帰りの列車に乗りローマまでの帰途についたのでした。

現地レポートオルシーニ

サン・ジャコモ 2019年2月

2月上旬。エミリア・ロマーニャ州レッジョ・エミリアにある、バルサミコ酢生産者<アンティカ アチェタイア サン・ジャコモ>を訪問しました。

ミラノ中央駅から高速鉄道で約40分、最寄り駅のAVメディオパダーナ駅で、オーナー、アンドレア・ベッツェッキさんと待ち合わせ。落ち着いた印象のアンドレアさんは、何度も日本にも来たことがあるという親日派。アチェタイア(醸造所)までの約20分間、ブドウ畑が続く道を車で走りながら、バルサミコ酢について説明してくれました。

「バルサミコの原材料は、モスト・クルード(生ブドウジュース)だけ。ブドウはすべてレッジョ・エミリア県産で、ブドウ品種としては、ランブルスコ種、トレッビアーノ種、赤い色素の強いアンチェロッタ種の3種がメインだね。アグロ・ディ・モストは、ランブルスコ・マラーニとランブルスコ・マエストリ、アンチェロッタで80~90%になるかな。品種の配合は毎年同じって訳じゃないんだよ。年によって作柄も違ってくるので、その年その年のベストな配合を考えなきゃいけないんだ。ランブルスコ種は面白い品種で、その昔は100種類以上もクローンがあったんだけど、今、残っているのは約10種類程度かな。残念な話だね。」

サンジャコモ現地レポート 2019年2月

運転しながら、丁寧に説明を続けるアンドレアさん。
「このモスト・クルードを、ガスの直火にかけて、90~95℃の温度で約12時間加熱し、60%~70%まで煮詰めたものがモスト・コット(加熱濃縮ブドウジュース)。アグロ・ディ・モストは、このモスト・コットを大樽で酸化させ、約2年熟成させたものなんだよ。」

「熟成約8年のエッセンツァは、アグロ・ディ・モストと全く同じブドウで作られているんだけど、もっと小さな木樽で熟成させることで、アグロ・ディ・モストより濃厚で、緻密なバルサミコに仕上げているんだ。」

サンジャコモ現地レポート 2019年2月

イタリア語の説明を集中して聞いていると、あっという間にアチェタイアに到着。見晴らしのいい景色の中に、エミリア・ロマーニャらしい大きな建物がありました。オフィスとアチェタイア、2棟の連結部分には見学者用に分かりやすく説明が書かれた壁画があります。
「今日も午後から小学校の生徒さんが見学に来るんだ。」

サンジャコモ現地レポート 2019年2月

そもそもバルサミコ酢とはという話になると、アンドレアさんの説明にも俄然熱が入ります。
「Aceto Balsamico Tradizionale DOP(伝統的製法のバルサミコ酢)は、世界でも2つの街、レッジョ・エミリアとモデナだけで作られています。歴史的には、この2つの街も、エステ家の中の一つのコムーネ(共同体)だったんだけど、今は同僚であり、尚且つライバルってところかな。」
「レッジョ・エミリアでは、熟成12年以上のアラゴスタ(レッドラべル)、20年以上のアルジェント(シルバーラベル)、25年以上のオーロ(ゴールドラベル)があります。モデナは12年と25年だね。両方とも100%モスト・コットからできているけど、味的にはモデナの方が少し甘いかな。」

「日本でもスーパーマ-ケットで、Aceto Balsamico di Modenaってラベルをよく目にすると思うけど、これはIGPの量産品で、これに比べるとDOPのAceto Balsamico Tradizionaleは、バルサミコ酢の生産量全体の0.0001%しかないんだよ。Aceto Balsamico Tradizionaleがどれだけ貴重かわかるといいんだけど。」

サンジャコモ現地レポート 2019年2月

屋外での説明が終わると、アチェタイアの一階に移動します。
「ここで、モスト・コットを樽に入れて発酵・酸化させています。モスコットはまずアルコールに変わり(一次発酵)、その後、アルコールがヴィネガーへと変わります(ニ次発酵)。酸化を促すために、樽は完全に蓋をせず、上部の穴に、布一枚を被せ、蓋は重し程度に軽く乗せるだけです。」

奥には、「バルサメーラ」用のステンレスタンクが見えました。
「リンゴ本来の香りと味を生かすために、木樽ではなくステンレスタンクで発酵と酸化をさせているんだ」 原材料のりんごは、北イタリアのトレンティーノ・アルトアディジェ産、ビオディナミ栽培のピンク、ゴールデン、エンヴィという品種を使用しているそうです。
「バルサメーラ」は、生りんごジュース(りんご版のモストクルード)から作ったりんご酢に、りんご果汁を煮詰めたもの(りんご版のモスト・コット)をブレンドして作られています。

サンジャコモ現地レポート 2019年2月

2階は熟成庫で、天井にはIl tempo(時間)と書かれたボードが吊るされています。バルサミコ酢には時間こそが最も大切な要素ということを表しています。見学に来る子供たちにも分かりやすそうです。
「木樽は、異なる木材のエッセンスをバルサミコ酢に加えています。最も頻繁に使用しているのが、オークと栗です。トリネコ、アカシア、桑(現在では珍しい)、桜、ジュニパーの7種類を使用しています。これは生産者によって使用する順番が変わります。桜や桑、ジュニパー、トリネコは比較的初期や中期に使用することが多いかな。グラッパで使った樽を使うこともあります。」
この場所には2年から50年くらい熟成されたバルサミコが眠っています。一体いくつの樽が眠っているのでしょうか。

サンジャコモ現地レポート 2019年2月

2階の熟成庫から、1階に移動し、サンジャコモの伝統製法のバルサミコ酢のラインナップを見せてくれました。
既に説明のあった熟成12年以上のアラゴスタ(レッドラべル)、20年以上のアルジェント(シルバーラベル)、25年以上のオーロ(ゴールドラベル)です。

サンジャコモ現地レポート 2019年2月

お隣のテイスティングルームに移ると、サンジャコモのヴィネガーのラインナップと、アンドレアさんの世界のお酢のコレクションが並んでいました。もちろん日本のお酢もありました。

サンジャコモ現地レポート 2019年2月

お昼に行く前に、通り道沿いにあるパルミジャーノ・レッジャーノの工房の見学も。そう、まさにここはパルミジャーノ・レッジャーノのお膝元でありました。ゆえにパルミジャーノ・レッジャーノにも造詣が深いアンドレアさん。資格も取得中だそうです。

サンジャコモ現地レポート 2019年2月

アンドレアさんのお兄さんが経営するバール Bar Romaにてランチ。
イタリアで有名な食とワインの雑誌、ガンベロロッソでイタリアバール・ベストテンの常連のこのバールでは、サンジャコモの製品を使ったお料理がカジュアルに楽しめます。

サンジャコモ現地レポート 2019年2月

Aceto Balsamico Tradizionaleをパルミジャーノ・レッジャーノチーズにかけたり、ホウレンソウ入りラヴィオリにエッセンツァをかけたり、バニラのジェラートには熟成12年以上のアラゴスタ(レッドラべル)をかけたり。バールでこのランチ、さすがは美食の街レッジョ・エミリアだなと驚いたのでした。

サンジャコモ現地レポート 2019年2月


フォンテ・ディ・フォイアーノ 2019年2月

数年前にテイスティングしてどのオイルもクオリティーが高く、恋に落ちたオリーブオイルがありました。

トスカーナ州リボルノ県はティレニア海に面し、高級ワインで有名なボルゲリにあるその生産者。標高100m前後にあり、土壌は粘土質と石灰質。海に近いのでミネラル豊富な土地で、オリーブの木は爽やかな潮風を受けます。

車で中部イタリアらしいオリーブや葡萄の畑の中を進み、アグリツーリズモ(農園宿泊施設)も併設してる入口の門をくぐると、両脇には背の高めなオリーブの木が続く道があります。

トスカーナ州リボルノ県にあるフォンテ・ディ・フォイアーノ
搾油所兼サロンの入り口

建物から出てきたオーナーの一人シモーネさんに、道に迷い少し遅刻した事を謝罪すると、ニコニコした顔で私達を迎えてくれました。

建物の中に入ると、サロン兼食堂なのか、窓からの見える景色が素晴らしく、一面のオリーブ畑が広がっています。はるか向こうにはティレニア海がわずかに見え、この開放感が時間を忘れさせいつまでも見ていたくなる気にさせました。

フォンテ・ディ・フォイアーののオリーブオイル
ボルゲリ地方の景色が広がります
アグリツーリズモ(農園宿泊施設)も併設してるフォンテディフォイアーノの農園
奥の搾油所とは扉で仕切られています

周りを見ると、窓と反対側には 搾油所らしき部屋が見え、そこにはもう一人のオーナーのパオロさんが忙しく動いていました。シモーネさん「僕たち兄弟で運営していて、キッチンはSorella(姉か妹)がやってるんだ。早速だけど 畑、見てみますか?」

アグリツーリズモ(農園宿泊施設)も併設フォンテディフォイアーノの畑
搾油所の目の前がオリーブ畑

冬のこの時期、こちらの農園ではこれから剪定が始まるようで、まだオリーブ畑は眠っているかのようです。背が高い木が多いのは、数十年前にトスカーナを襲った寒波の影響がここには届かなかったからだそうです。

オリーブの木
青空に向かってのびるオリーブの木

広いオリーブ畑を散歩して戻ると、これまた楽しみな搾油所見学です。片面がガラス張りで、床はテラコッタ。

フォンテ・ディ・フォイアーノの搾油所
外から直接オリーブを運び、機械へ

開放感もあり、なんだか一般的な搾油所より温かみのある部屋に、ここ搾油所なのかな…と思いながら説明を聞いてました。そこには最新鋭の搾油機がつらなっていました。心地の良い清潔感のある空間に、手入れの行き届いた機械。生産者さんの愛情と情熱を感じました。終始事細か説明してくれるシモーネさん。機械の事、化学の事、搾油の事。

「ここは取り外しができて、その年や状況によってあう装置に変えてるんだ。うちではフィルターが非常に大事で、すぐにフィルターを何回かかけるよ。」

フォンテ・ディ・フォイアーノのオリーブオイル
フィルター後、フィルター前

誠実に丁寧に仕事をしてるであろうシモーネさん。もう一人の少し強面なパオロさんは職人さんらしく言葉少なで、何処かへ行ってしまって見当たらない。

いくつかの部屋には、瓶に充填する機械、出荷を待つダンボール、奥にはエアコンで温度管理された部屋にステンレス製のタンクが並んでいました。窒素でみたされたそのタンクはオイルの種類毎です。施設内は清潔で余分なものがありませんでした。

フォンテ・ディ・フォイアーノの搾油所
定温管理された保管部屋

搾油所見学を終え、先程の景色の良いサロンのテーブルに戻ると、オイルのテイスティングの用意がしてありました。

フォンテ・ディ・フォイアーののオリーブオイル
「この順番でね」とシモーネさん

優しいオリーブオイルからテイスティングカップに入れて口に含みます。それぞれのオイルの使用品種、味わい香りなどの意見交換。どれも素晴らしく美味しかったです。なんて幸せな状況なのだろうと、夢心地でテイスティングが進みました。
この後は、オリーブオイルを買いに部屋を移動すると、数々の賞状が額に入り壁にかかった部屋でした。

オリーブオイルの賞状
壁には額縁をかける場所が無いくらいの数の賞状が

最高級オリーブオイルを使ったいくつかのガイドブックやレシピ本に、こちらのオイルも載っていて、その本を嬉しそうに見せてくれました。「搾油時期もアグリツーリズモやってるし、また来て下さいね。」
この豊かな景色の中で極上のオリーブオイルを使った食事をとり宿泊するなんて…それは素晴らしい体験であると想像できますね。

フォンテ・ディ・フォイアーノ
敷地の入り口


バルディ 2018年9月

オリーブオイルに携わるようになってから、オリーブ畑はマイパワースポットになっています。

風がとおりぬけるバルディ家のオリーブ畑

フィレンツェから車で2時間ほど、トスカーナ州シエナの近郊にあるペトロイオ村。アグリツーリズモもやっているフランコ・バルディさんの農園にお邪魔しました。

フランコ・バルディ氏

小高い丘にある敷地に入っていくと、親しみのある笑顔のフランコさんと、お孫さんのアンドレア君が出迎えてくれました。
先ずは畑から案内をしてくださいました。
オリヴァストラ・セッジャネーゼ種、モライオーロ種、フラントイオ種、レッチーノ種など、バルディさんがオリーブの木を一つずつ丁寧に説明してくれます。

モライオーロ種(葉が深緑)

近くでみると、樹の形、葉の形、実の形などよくわかります。

地品種のオリヴァストラ・セッジャネーゼ

樹齢約500年のオリヴァストラ・セッジャネーゼ。貫禄の樹です。

枝が下向きなフラントイオ種

収穫目前で実がたわわになっています。

2018年8月の雹を受けた樹は、傷を治すように一部かさぶたのようなものが

オリーブは順調に成長していて、10月初旬に収穫搾油を予定しているそうです。

どのオリーブも実が鈴なりです

途中、「青い実をかじってよい?」と聞くと、「実を?」とアンドレア君に呆れた顔をされてしまいました。
そうそう、この香り、この渋み。
オイルになる前のオリーブの味です。

こんなオリーブの木陰で一日過ごしていたい!
ピカピカの機械が出番を待っていました

次は搾油所へ。
今までは近所へ行っていたそうですが、今期から自前の搾油機を導入されています。
オイルがここからでる時にきたかった!

トスカーナ式の食べ方「フェットゥンタ」

事務所にはたくさんの賞状や他国との交流記録があり、バルディさんのオイルが世界でも愛されていることがわかります。
アンドレア君がパンを焼いてきてくれました。
オリーブオイルをたっぷりかけていただきます!

アンドレア君「はい、どうぞ!」
私「Buonissimo‼︎(とっても美味しい!)」

まさにトスカーナの田園の景色

畑はオーガニック認証をとっていて、今も農地を拡張しながら新しい苗を植えています。
後継者問題で悩む農園さんも多いなか、後継が育ち、安定したクオリティを保っているフランコさんをとても尊敬します。
2階のテラスから一望できる景色は言葉にできません。
気持ちの良い風に吹かれて、なんとも幸せな気持ちになります。

手入れの行き届いたバルデイ家の庭

トスカーナを代表するバルディのオリーブオイルを、これからも大切にしていきたいと思いながら、農園を後にしました。



バッタ 2018年2月

イタリア中部ウンブリア州ペルージャ近郊のオリーブオイル生産者。
駅で初めてお会いしたオーナーのジョバンニ・バッタ氏はプラカードを持って待っていてくれました。彼は私が今まで見た事がないくらい、目がキラキラした方でした。
ペルージャ駅からオリーブ畑を抜けて、車で程なく「フラントイオ・バッタ」社に到着。
熱烈に歓迎されたのは大型のワンちゃん。そして奥様のジュリアーナさんと100歳近くになるお祖母様が静かに佇んでいました。
「彼女が元気なのはウチのオリーブオイルを使ってるからよ」と奥様。
そんな元気の秘訣がこれから見れるのかなと期待が高まってきました。

フラントイオ(搾油所)の入り口
フラントイオ(搾油所)の入り口

早速 事務所兼フラントイオ(搾油所)へ向かう。
話していると、とても明るくてチャーミングな奥様ジュリアーナさんと、物静かで誠実さが滲み出てるジョバンニさん。
こちらの緊張も少し解けてきたところで、まずは搾油所内の見学。

搾油所内は清潔で整理整頓されています。
搾油所内は清潔で整理整頓されています。

コンパクトながら清潔で掃除の行き届いた部屋と搾油機械。どうやってオリーブオイルが出来るのか順を追って説明してくれます。
「敷地は14ヘクタール、約3,400本のオリーブが植わってます、この写真が敷地の航空写真ね」知的で饒舌な奥様が サポートしてお話してくれます。

バッタ氏所有の畑の航空写真
バッタ氏所有の畑の航空写真

そしてジョバンニさんとオリーブ畑へ。
「この木はレッチーノ種、この元気な木は土着品種のドルチェ・アゴージャだよ。この品種はパワフルだから葉っぱも上向きなんだ。ポリフェノール値も高いしね。」

広々としたオリーブ畑
広々としたオリーブ畑

冬のオリーブ畑は華やかではありませんが、歩いていて とても気持ちが良い。
丁度剪定シーズンだったらしく、何人かの方が働いていました。一人すごく話してくれる人がいて、イタリア人だなぁと密かに思っていました。

オリーブの剪定中
オリーブの剪定中

畑の見学を終えて事務所に戻ると、ご近所のマダムがオリーブオイルを買いに来てました。地元にも愛されている生活に密着しているオリーブオイル生産者、イタリアの日常を垣間見ました。

ご近所さんがオリーブオイルを買いに来ている様子
ご近所さんがオリーブオイルを買いに来ている様子

「じゃあ、味見してみる?」
出されたのはDOP UMBRIAの1つと、オーガニックのブレンドのもの。
2月の訪問なので、前年の秋搾油のものでとても状態が良く、欠陥要素はまるで無し!

秋に搾油したばかりのEXVオリーブオイル
秋に搾油したばかりのEXVオリーブオイル

アーティチョークや葉野菜の香りが広がりしっかりとした辛味と苦みのバランスがよく、…美味しいー。
いつの間にお隣には、先程剪定してたあのよく話す方がいらっしゃって「どう?」と聞いてくる。聞くと鑑定士の方で、バッタさんのアドバイザーも務めているらしい。
どんなお料理にあいますか?との問いに、
「様々な料理にあうよ、ブルスケッタ、サラダ、肉類、マメ類。そう近くに湖もあるから淡水魚との相性も良いんだ」と。
えー、これは驚き!試さなきゃいけないメニューです。
そして何と言っても、この地は黒トリュフでも有名です。
アーティチョークのサラダか黒トリュフ料理に、バッタ社のオリーブオイルをかけたくなる…そんな胃袋でした。

アーティチョークにパルミジャーノチーズスライスにバッタのオリーブオイルをかけて
アーティチョークにパルミジャーノチーズスライスにバッタのオリーブオイルをかけて

パワフルな土着品種ドルチェ・アゴージャと穏やかで品のあるバッタご夫妻、オリーブオイルをライフワークにしている人々。
緑豊かな土地で元気な食材を食べる、これこそが 健康の秘訣かなと思うのでありました。

事務所には数々の賞状が飾られ、オリーブを測っていた秤などもあり。
事務所には数々の賞状が飾られ、オリーブを測っていた秤なども。
仲の良いバッタご夫婦
とっても仲の良いバッタご夫婦

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